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口腔内細菌と炎症性腸疾患
2017年10月29日
10月20日付のサイエンス誌に早稲田と慶応の研究グループが興味深い研究結果を発表しました。
(Ectopic colonization of oral bacteria in the intestine drives TH1 cell induction and inflammation
http://science.sciencemag.org/content/358/6361/359
国内向けのプレスリリースでは、「口腔常在菌の中には、異所性に腸管に定着すると免疫を活性化するものがいる」というタイトルで発表されています。
慶應大学プレスリリース
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2017/10/20/28-24943/
早稲田大学トピック紹介
https://www.waseda.jp/top/news/54628
通常では病原性のない口腔常在菌であるクレブシエラという細菌が、腸内細菌叢が乱れることによって腸管に定着し、クローン病や潰瘍性大腸炎 などの病気を発症する要因になっている可能性があるという内容です。
これまで私たち歯科医師は、虫歯菌や歯周病菌については着目していましたが、それ以外の口腔内細菌に関してはほとんど関心を寄せてきませんでした。
研究報告が少なかったこともありますが、臨床で行える検査にも限界がありました。
口腔内細菌検査では主にPCR法という細菌検査手法が用いられていますが、私たち臨床医が利用できる検査では、歯周病菌で最大でも6種類の検出にとどまります。
このような検査内容では全身へ関与する口腔内細菌環境を詳細に調べることは困難でした。
しかし、最新の次世代シーケンサーという検査機器を用いたメタゲノム解析という手法を用いることによって一気に100種類以上もの細菌を検出することが可能になり、より詳しい細菌叢の情報を得ることができるようになったのです。
今後もこのような口腔と全身疾患の関連性に関する研究報告が次々に出てくる可能性がありますので、私も常に注目していかなければならないと思っています。
歯周病菌が腸内細菌へ影響を及ぼすことにより全身疾患発症に関与するという報告は以前にもされています。
このようなことからも、虫歯や歯周病対策だけにとどまらず、やはり全身の健康管理の一環としてお口のメンテナンスを考えることが重要だと思います。
現在当院でもメタゲノム解析を取り入れて口腔内の細菌チェックを行なっていますので、検査をご希望される方はスタッフにお声掛けください。