ブログ
第62回春季日本歯周病学会
2019年06月27日
横浜で開催された歯周病学会に参加してきました。
毎回興味深い発表や講演がありますが、今回私が注目したのは新潟大学のグループで、腸内細菌の代謝産物にスポットを当て、それが歯周病の発症や進行に影響を与えているのではないかという内容の発表でした。
口腔内細菌や腸内細菌が全身へ与える影響については最近の様々な研究で徐々に明らかになりつつあります。私が口腔内細菌に興味を持って検査を始めてから10年以上になりますが、特にここ数年の細菌検査技術の進歩は目覚ましく、その情報量は膨大なものになります。そこから日常臨床に利用できる情報はまだ限られているのですが、現在は新しい研究報告が短いスパンで次々に出てくる状況ですので、私も常にそれらの情報のアップデートに努めようと思います。
また、大阪大学の研究グループからは、お口の写真(歯が写っている)を取ると歯周病の進行状態を推測することができるAIアプリの開発についての発表がありました。歯周病は自覚症状の無いまま進行することもある疾患ですので、歯科医院を受診すべきかどうかをご自身で判断するための有用なツールの一つになり得ると思いました。この発表の際に、NTTドコモの方から質問がありましたが、NTTドコモも東北大学と共同で同様の研究を進めているようです。
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/
1902/21/news142.html
過剰治療 オーバートリートメント
2019年01月03日
昨年2018年9月にスイス経済研究センターが歯科医院の過剰治療についての調査報告を発表しています。
スイス国内180の歯科医院を調査員が受診して診断を受けたところ、そのうちの28%でスイスの治療基準に照らし合わせて過剰と思われる治療を勧められていたということです。加えて患者の社会経済的地位が低いと思われる場合にはさらにその割合が多くなっていることなどもわかりました。
国際歯科連盟(FDI)が2002 年に提唱したミニマルインターベンション(MI)という虫歯治療の基本概念の中に「最小限の侵襲」というくだりがあります。
https://www.fdiworlddental.org/sites/default/files/
media/documents/Minimal-intervention-in-the
-management-of-dental-caries-2002.pdf
この中の一文にできるだけ健康な歯質は削らないようにしましょうという内容の箇所があり、このことは私も日常的に意識しながら治療にあたっているのですが、削るか削らないかの線引きが難しい場合もあります。そのような時は患者さんご本人ともよく話し合いながら治療を進めるようにしています。
もちろん、できるだけ歯を削らないに越したことはありませんが、必要な治療をきっちりと行うことも重要です。
ちなみにこのFDIが提唱したMIで一番に取り上げられているのは「口腔内細菌叢の改善」です。
今ではこのステイトメントが出された時よりもさらに細菌検査技術が進歩しており、口腔内細菌の詳細が調べられるようになっています。
歯石やプラークを取り除くクリーニングはもちろん大切ですが、その前段階としてこのような検査による個々人の細菌叢を把握することの重要性も増しています。
やはり虫歯になってしまう前の予防対策が最も大切ですね。
原井デンタルオフィスではこれらのことを踏まえてお一人お一人の口腔ケアに力を入れていきたいと思います。