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イーロンマスクのツイートから
ちょっと気になるツイートを見かけました。
2017年11月14日
世界的な起業家でテスラモータズやスペースX社のCEOなどを務めるイーロンマスク氏が9月4日に発信したツイートです。
“China, Russia, soon all countries w strong computer science. Competition for AI superiority at national level most likely cause of WW3 imo.”
「中国、ロシア、すぐにあらゆる国が強力なコンピュータサイエンスを持つようになるだろう。私の考えでは、国家レベルでのAIの優位性に関する競争が恐らく第三次世界大戦の原因となるだろう。」
このツイートですぐに手塚治虫の代表作「火の鳥」が頭に浮かびました。
その中の未来編という作品中では、人類は悪化した地球環境を避け、五つの人口巨大都市メガロポリスに住んでいます。それぞれの都市は人工知能によってコントロールされ、あらゆる事柄がこの人工知能によって決定されます。人々はそれに従わなくてはなりません。その人工知能の暴走によりメガロポリス間の核戦争が勃発するという設定です。
この作品は1967年から翌1968年にかけて描かれました。
今からちょうど50年も前に手塚治虫が描いたSF漫画の世界が現代のイーロンマスクのツイートとリンクして何とも言えない不安感を覚えます。
まだ実質的な人工知能が存在していない時代であったにもかかわらず、手塚治虫はすでにその危うさを感じ取っていたのでしょう。
かつては“SF=サイエンスフィクション”であった世界観が限りなく“SF=サイエンスファクト”に近づいているように感じられます。
地球の未来がこのようなディストピアとならないように祈るばかりです。
イーロンマスクには火の鳥の感想を聞いてみたいです。
口腔内細菌と炎症性腸疾患
2017年10月29日
10月20日付のサイエンス誌に早稲田と慶応の研究グループが興味深い研究結果を発表しました。
(Ectopic colonization of oral bacteria in the intestine drives TH1 cell induction and inflammation
http://science.sciencemag.org/content/358/6361/359
国内向けのプレスリリースでは、「口腔常在菌の中には、異所性に腸管に定着すると免疫を活性化するものがいる」というタイトルで発表されています。
慶應大学プレスリリース
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2017/10/20/28-24943/
早稲田大学トピック紹介
https://www.waseda.jp/top/news/54628
通常では病原性のない口腔常在菌であるクレブシエラという細菌が、腸内細菌叢が乱れることによって腸管に定着し、クローン病や潰瘍性大腸炎 などの病気を発症する要因になっている可能性があるという内容です。
これまで私たち歯科医師は、虫歯菌や歯周病菌については着目していましたが、それ以外の口腔内細菌に関してはほとんど関心を寄せてきませんでした。
研究報告が少なかったこともありますが、臨床で行える検査にも限界がありました。
口腔内細菌検査では主にPCR法という細菌検査手法が用いられていますが、私たち臨床医が利用できる検査では、歯周病菌で最大でも6種類の検出にとどまります。
このような検査内容では全身へ関与する口腔内細菌環境を詳細に調べることは困難でした。
しかし、最新の次世代シーケンサーという検査機器を用いたメタゲノム解析という手法を用いることによって一気に100種類以上もの細菌を検出することが可能になり、より詳しい細菌叢の情報を得ることができるようになったのです。
今後もこのような口腔と全身疾患の関連性に関する研究報告が次々に出てくる可能性がありますので、私も常に注目していかなければならないと思っています。
歯周病菌が腸内細菌へ影響を及ぼすことにより全身疾患発症に関与するという報告は以前にもされています。
このようなことからも、虫歯や歯周病対策だけにとどまらず、やはり全身の健康管理の一環としてお口のメンテナンスを考えることが重要だと思います。
現在当院でもメタゲノム解析を取り入れて口腔内の細菌チェックを行なっていますので、検査をご希望される方はスタッフにお声掛けください。
糖尿病1000万人
2017年09月24日
厚生労働省が2016年に行った国民健康・栄養調査の結果が先日公表されました。
なんと糖尿病有病者が1000万人に達したということです。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177189.html
この状況は私たち歯科医師も注目しなければならないと思います。
歯周病は糖尿病の6番目の合併症とも言われ、近年は歯周病と糖尿病の密接な関係が様々な研究で明らかにされており、糖尿病有病者が増加しているということはそれだけ歯周病リスクのある人も多くなっている可能性があるということです。
さらにこの報告は、糖尿病有病者のうち23.4%が治療を受けていないことも指摘しています。
糖尿病の方は口腔内の歯周病治療だけではどうにも改善がみられないということがあり、病状が安定しない人ほど歯周病の治療も難しい傾向があります。
逆に、糖尿病の病状改善のためにも歯周病治療が必要になります。
最近では内科からの紹介で、歯周病の治療を受けるように言われて来院される糖尿病患者の方もいらっしゃいます。
糖尿病も歯周病もどちらか一方だけの治療では効果が限られてしまうことも考えられるため今後はさらに医科と歯科の連携が重要になるでしょう。
糖尿病の治療を受けている方でまだ歯科を受診されていない方は是非一度お口の検診を受けてください。
日本口腔検査学会誌論文
2017年07月15日
日本口腔検査学会誌論文
私も共同研究者として携わった論文が日本口腔検査学会誌に掲載されました。
(日本口腔検査学会雑誌 第 9 巻 第 1 号: 3 – 9 , 2017)
「重度歯周炎患者のスクリーニングを目的とした喫煙歴の有無を加味した歯周病原細菌関連検査の有用性に関する検討 」というタイトルです。
第一著者は医療法人こうの歯科医院の河野寛二先生、私はいつものようにデータ解析担当です。
この研究では、ポルフィロモナス・ジンジバリスとトレポネーマ・デンティコーラという2種類の歯周病菌と喫煙歴を合わせて診る検査方法が重度歯周病のスクリーニングに有用である、という結果になりました。
歯周病は放置するとほとんど自覚症状のないまま進行してしまう怖い病気です。それだけに、病状に無自覚な方をいかに効率よく確実にスクリーニングして治療へ導けるかという問題はとても重要です。
この論文はそのような課題を解決するための一つの方向性を示すことができたと思います。
日本口腔検査学会ホームページ
http://www.jsedp.jp
2017年 春季日本歯周病学会 (福岡)
2017年06月16日
5月12、13日の両日、福岡で歯周病学会が開かれ、私も参加してきました。
今回の学会のメインテーマは「歯周病学の挑戦~サイエンスとヒューマニティの調和」。
ともすると、医療の分野では、学問としての医学と臨床現場での医療行為が乖離してしまうことがあります。
臨床において、単に経験則に頼った医療行為では治療の安全性や効果を的確に評価できません。やはり医療行為には詳細な科学的根拠が大切です。
一方、「科学」をベースにした「医学」は、基本的に体の仕組みや病が研究対象ですので、そこでは「人(人格)」と対峙するという臨床の視点がありません。
臨床と医学の調和がとれた医療こそが本来求められるものでしょう。
我々臨床医はそのことをよく理解して日々の診療に臨まなければならないと思っています。